「市販品のバレエウェアが着られない」そんなあなたの欲しいものはここにあります!

私がバレエウェアを作る理由 6 暴走し始めた病

2018/10/02
 
この記事を書いている人 - WRITER -
クラシックバレエとソーイングが大好きなアラフィーです。夏の暑さにも負けず、冬の寒さにも負けず、先生のお小言にもめげず、レッスンとウェア制作に励んでおります。座右の銘は「一生現役」。得意なパはピケターン。キトリのカスタネットのソロを踊るのが目標。

私のサイトへようこそ! バレエウェアコーディネーター、結月ななです。

初めての方、宜しくお願いします。続けて読んでくださっている方、ありがとうございます。

前回の私がバレエウェアを作る理由 5では、発表会までの経過と、発表会前日に先生からメールがあったこと、当日2年ぶりに先生と会えたこと、連絡ミスで先生にメイクをしてもらえなかったこと、舞台が終わった後、先生を囲んで教え子みんなで写真を撮ったことまでお話しました。

その後、メイク落としや後片付けでバタバタしている間に、先生はお帰りになられてしまい、個別にお話しすることが叶わないまま帰途につきました。そして翌日、先生からメールが届き…

今回はそこからのお話です。

皆さんに会えて嬉しかった。でも…

先生からのメールには、こんなことが書かれていました。

「久しぶりに皆さんに会えて嬉しかった。」「つたない踊りながら、一生懸命に演じている姿を見て、涙、涙でした。」

この一文を読んで、とても嬉しくなりました。しかし、読み進めていくうちに、嬉しい気持ちに暗い雲がかかってきたのです。

「体調は大分回復してきましたが、まだまだバレエには程遠いです。」「でも前向きに治療頑張っています。」「遠くから見守っていますよ。バレエ頑張って。」と、書かれていたからです。

お元気そうに見えましたが、まだ治療終了の目処は立たず、復帰の時期も見えてこないようでした。だから、「次はいつ会いましょう」と書けないのかなと思いました。

「遠くから見守っていますよ」

特にこの一文は、やっとお会いできて、空白が少し埋まったかなと感じていた私にとって、また、突き放されたような悲しい気持ちがしました。

でも、「でも前向きに治療頑張っています。」という言葉を信じようと思いました。「次に会う時にはもっとよくなっていて、以前のような元気な姿になってお会いできると信じよう」と、改めて思いなおしたのです。

抗がん剤が使えるようになれば…

その次に、先生にお会いできたのは年の末、毎年恒例の舞台の日でした。

この時も、前日に突然「メイクのお手伝いに行きます」とメールをくださいました。「(発表会と)同じ演目をもう一度練り直して演じられるのって、いいですね」とも書いてありました。

その年の文化祭は、発表会の後、新しい演目に変更するのではなく、発表会の演目の中から抜粋したものを、一部振付を変更して再演したのです。

翌日、とても元気な様子でお見えになった先生は、ニコニコと楽しそうに、子供のメイクや、私たちおばさん軍団のメイクの手直しをしてくださいました。発表会の時は、連絡ミスがあって叶いませんでしたが、今回はしっかりメイクを治していただきながら、先生とお話する時間が取れました。

たわいのない話題で、楽しく会話していたのですが、その途中で、先生がぽろっと一言「抗がん剤が使えるようになればいいのだけれど…」と、おっしゃったのです。とても気になる一言だったのですが、あまり詳しく聞いてしまっては失礼かと思ったので、それ以上その話題には触れませんでした。

しかし、その一言は、ずっと私の心のすみにひっかかっていました。

後になって振り返ってみると、この時には、今までの薬では治療の効果が上がらなくなっていて、新しい薬に切り替える必要があったのではないでしょうか。

なんだか嫌な予感がしました。

私のバレエの原点は無料講習から

年が明けてしばらくして、4年ぶりに無料講習が開催されることになりました。今回で5回目になります。

思い返せば12年前、私は初めて開かれた無料講習の受講生として、バレエのレッスンをスタートさせたのでした。

その講習の最終日、思うように動かない自分の体に嫌気がさして「もっと早く、もっと若い時期にバレエが習いたかった…」といった私に、「今だから習えるようになったのよ。」「今がその時なのよ。」そういって、有料のクラスに切り替えて、レッスンを継続することを勧めてくれ、背中を押してくれたのが、その時講師をしてくださったR先生その人だったのです。

あの時、R先生に出会わなければ、今の私はありませんでした。

きっと、バレエを続けていることも、バレエウェアを作成していることもなかったでしょう。あの時無料講習を開いてくださったこと、私に「バレエを続けなさいね」と勧めてくださったこと、R先生にはとても感謝しています。

たった半年で、がんは先生の身体を蹂躙していた

これまでの無料講習の受講生は、私たち有料クラスの生徒と一緒にレッスンを受けていました。

しかし、今回は別々にするとの方針で、私たちのレッスンは、講習より前の時間帯に行われることになりました。用事があって間に合わないなどの場合は、無料講習の時間帯での参加でもOKと言われましたが、出来るだけ別々にしたいようでした。

講習が始まる最初の日、自分のレッスンのために教室に入ろうとした時のことです。背後から、懐かしい声が私の名前を呼びました。

「ななさん。ひさしぶり!!」

「先生!!」

振り向くと、なんと、R先生がそこにいました。見慣れたレッスンウエアを着て、私に微笑みかけていました。

「ちょっとだけ、お手伝いに来たの。」

今回の講習会は、事前にY先生ともう一人の先生だけで指導すると聞かされていたので、まさか、R先生にお会いできるとは思っていませんでした。思いがけない再会は、とてもとても嬉しかったです。

しかし、その姿に私は愕然としました。

半年前、去年の暮れにお会いしたときとは、別人のように痩せて、げっそりとやつれておられたのです。

痛みがあるのか立っていられず、かといって椅子に座っているのも辛い様子で、病状が進行しているのは明らかでした。

先生の身体の中で、病が暴走を始めていたようでした。

2年かけて、辛いがんの治療を頑張ってきた先生と、やっと発表会で再会できて病状がよくなって来たことを喜んだのに、それからたった半年で、こんなに悪化してしまうなんて…。

目の前に突き付けられた辛い現実に、私は言葉を失いました。

いったい、先生の身に何が起こったのか…。

私がバレエウェアを作る理由 7に続きます

この記事を書いている人 - WRITER -
クラシックバレエとソーイングが大好きなアラフィーです。夏の暑さにも負けず、冬の寒さにも負けず、先生のお小言にもめげず、レッスンとウェア制作に励んでおります。座右の銘は「一生現役」。得意なパはピケターン。キトリのカスタネットのソロを踊るのが目標。

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA