今だから言える話「リベンジ くるみ割り人形」でも後悔は尽きない
お読み下さりありがとうございます。結月ななです。今回は、初舞台から5年後。2回目になるくるみ割り人形の時の話です。
大失敗して花のワルツがトラウマになった初舞台から5年、色々なことがありました。興味を持たれた方は(有難うございます<(_ _)>)私がバレエウェアを作る理由2以降に詳しく書いてありますので(リンクを貼りました)お手数をおかけしますが、そこから飛んで、読んでいただければ有難いです。
5年目のリベンジ
ここからが本題です。
一番の見せ場で大失敗をしてしまった初舞台。それが悔しくて悔しくて、「一回で終わりのつもり」だったはずの舞台出演を継続して、5年目の2017年。
演目はくるみ割り人形。待ちかねていた演目でした。
前回の舞台での大失敗のトラウマを吹き飛ばすのには、同じ演目をミスなく踊ること以外にないと、ずっと心のなかにあったので。
絶対に失敗なく踊りきる!リベンジする!!
7月に演目が発表され、振付が始まった時からそう心に誓って、とにかく練習に練習をかさねていきました。
ところが…前回と違って今回は出番がつぎつぎと増やされ…
最終的に舞台に出る時間が3倍に増えていました(゚Д゚;)。
R先生最後の演目、5年後は私が踊る
前回は初舞台ということもあって、出番は最後の最後、花のワルツの後半部分だけでした。がしかし、今回は「花のワルツの最初」「中盤」「最後」の3か所+スペインの踊り…。
花のワルツは、前回の振付がもとになっているアレンジバージョンだったので覚えていた部分が多く(前回、半端なく苦労したので(´;ω;`)ウッ…)多少アレンジされてはいても、それほど苦労せずに落とし込めたのはさいわいでした。
しかし…
スペインの踊りはキャラクターダンス風の振付で、低い重心からの大きな動作で魅せるかっこいい踊りでした。優雅な花のワルツとはまったく違う振付なので、続けての練習になると、切り替えにすごく苦労したものです。
この踊り、奇しくもR先生の最後の踊りとなってしまった演目でした。あの初舞台で見たときから、私が一番踊りたいと思った振付で、一番着たいと思った衣装。
やりたいと思っていた踊りですから、振付自体を覚えるのはそれ程苦労はなかったのですが…。
頭ではわかっているけれど末端まで行き届かない…オバサンはつらい(苦笑)。
Y先生には「足の運びがドジョウ掬い!!」って散々笑われたけど、とにかくかっこよく踊りたくて、練習に打ち込みました。
夏に始まった振り写しから5か月間、一回一回のレッスンを大切に、必死に踊る日々。
毎回毎回、たくさんの気づきがあって、たくさんの注意をもらって、カメの歩みではありましたが、少しずつ少しずつ踊りは研ぎ澄まされていったのです。
スペインはほぼノーミス!さあ、次は…
そしてとうとう本番当日。
最後のリハで、花のワルツを踊り始めると、今まで注意ばかりだった大先生がいつになく「きれいよ!!」って、ものすごくほめてくれたのです!!。
その言葉がとても嬉しくて、まだ本番前なのに、涙が出そうになりました。
そして次の瞬間、心からの笑顔が出て、今までにないくらい手足が伸びて、とても楽しく踊れたのです。初めて、「舞台で踊るのが楽しい」って思えた瞬間でした。
そのとてもいい流れのまま、本番に突入!。
まずは、スペインの踊りから。
前奏が始まって舞台に飛び出し、自分の位置について自分のパートが始まるまでは緊張で膝が震えていました。でも、いったん踊り始まってしまったら緊張なんて吹っ飛んで、いままでになく集中できたのです。
手の振り方、脚の運び方、動作の一つ一つを指先からつま先まで、神経を配って踊りました。小さなミスはあったけれど何とか無難に踊りきれました。
このままのテンションで最後までいくぞ!
そんなことを考えながら、舞台のそでで、花のワルツの衣装に早着替えし、もう一度振りを一通りシミュレーションしているうちに、花のワルツの前奏が聞こえてきました。
今日のラストダンス。
大きく一つ息を吸って、3小節目で舞台に走り出ました。ここからはもう、あっという間の時間帯です。
舞台には魔物が棲んでます…ほんとに
舞台発表のつど、毎回思うのだけれど、稽古場では何一つ問題なくできる振りが、場所が舞台に変わるだけで落ち着かなくなるんですよね(私だけかな)。
今回は、冒頭の振りの部分で、どうしてもぐらついてしまって…。
ゲネプロの時もリハの時も一番おっかないT先生に
「わき腹を立てなさい!」
「なんでこんなとこでぐらつくの!!」
と、ものすごく怒鳴られ、注意されたのだけれど、どういうわけかこの部分だけ重心が定まらず、ぴたりと止まれないのです。
稽古場でのレッスンでは、一度もぐらついたことはなかったので、舞台稽古のたびに、自分なりに必死で頑張ったんだけど…。
なぜかうまくいかなくて。やっぱり本番でも、ダメでした(´;ω;`)ウゥゥ。
悔しいーーーー。やっぱり今回も魔物さんがいました。
とにかく必死になってその部分をやり過ごし、そでに駆け込んだとたん途端汗がどっと吹き出してきました。
「一番好きな振りなんだけどなぁ。」と思ったけれど、深く考える時間はありません。2分後にはまた舞台中央へ飛び出していくのですから。
走りでる合図になる音を逃さずにそでから飛び出し、舞台中央後ろにすばやく移動して、4番プリエを踏んでポーズ。ここからの振りはチームワークが見せ処なので、心のなかでカウントしながら、隣の人としっかりと呼吸を合わせて動きを揃えました。
いい感じ!!。
このあとは、さっき最終リハで大先生が「きれいよ!!」って褒めてくれたところです。振りが始まった途端、さっきの大先生の声が蘇ってきて、なんだかとても嬉しくなって、自然に笑顔がこぼれたのには、自分でもびっくり。
音がゆっくりに聞こえて、身体がストレスなく動くのが分かりました。手が、足が、自然にすっと長く伸びて、リハよりもさらに一段、いい踊りが出来ました。(100%にはまだまだですけれどね。)
とりあえず、リベンジは成功!
そしてとうとう、5年前に大失敗してトラウマの原因になった部分に差し掛かかりました。私の振付の中で最大の見せ場、ソテ-ソテ-グランジュテの繰り返しで、舞台を横断する部分です。
大きく一つ息をして、「さあ!いくぞ」と気合を入れました。
アームスは滑らかに、ジャンプは軽やかに、顔をちゃんとつけて、高さと距離の両方を意識して、引き上げて引き上げて!!
完璧なイメージ通り…とはいかなかったけど、ミスなく踊れた!!リベンジ成功!!
やったーーーーー!!
そのあとは一旦舞台袖に引き上げて、最後の出番を待ちました。音楽はどんどん激しく早くなりエンディングへ向かっていきます。
一列に並びなおして、舞台中央に向かって出ると、これがほんとにホントの最後。
「ああ、今年も終わるんだなぁ。終わっちゃうんだなぁ」と、踊りながらちょっと寂しくなりました。
最後のポーズをとったとき、音楽がジャンって鳴って終わり、大きな拍手と「ブラボォ!!」っていう声が客席に響き渡って。
暗転して、緞帳がするすると降りてくるのは、5年前と何も変わらない終わりの景色でした。
あの時は、私のすぐそばにR先生がいました。でも今は…。涙がこぼれそうになるのを必死でこらえました。
もう一度、一緒に舞台に立ちたかったなぁ…。
大先生の涙と後悔と…
そんなことを考えながら舞台袖に戻ると、「ほんとにバレエはいいわよねぇ」って、一人一人に声をかけ、手を差し伸べながら、大先生が泣いていて…。
夢中で大先生に駆け寄って、そのあったかい手に触れた瞬間、必死でこらえていた涙が吹き出してきて、そのあとはメイクが取れるのも構わずにボロボロ泣きました。
R先生、今日は失敗しないで出来たよ。見せたかったなぁ…
私は天を仰ぎました。
今、ここにR先生がいないことを、5年前のあの日、誰が思い描いたでしょうか。同じ舞台に立っていた誰一人として、想像すらしていなかったであろうし、考えもしなかったと思います。
おそらく先生自身も思いもよらないことだったでしょう。あのくるみ割り人形の舞台が、文字通り最後になってしまうなんて。
後悔は先に立たない…だから私は踊り続ける
私が舞台に出たことを、とても喜んでくれた先生。失敗を悔しいといったことを、とても喜んでくれた先生。
「時間はまだまだある」「先生にはいつでも教われるんだから」と何の疑いもなく信じていた私。だらけまくって自分を甘やかしてばかりいた私。
もっと教わりたいことがありました。もっともっとお話ししたいことがありました。ずっと一緒に、舞台で踊れると、何の疑いもなく信じていたのに…
いまとなっては、どれも叶わない夢となってしまいました。
後悔は、あとからあとからあふれ出て止まりません。
なんでもっと真剣に取り組もうとしなかったのだろう…先生はいつでも、私にチャンスをくれていたのに…
「後悔先に立たず」を地のまま行っちゃってた…。
ここまで生きてきて、人間は本当に、やらなかったことを後悔するものだなってあらためて思いました。
だから…
それからはずっと、くじけそうになるたび「これから先の人生は、絶対に後悔しない選択をするって決めたんだから!」と、心の中で繰り返し繰り返し、日々のレッスンに、毎年の舞台の振付に臨んでいます。
「踊れ!」「もっと踊れ!」
元気な時の先生に言われた一言を、かみしめながら。
なんとか元気で、バレエが出来る幸せをかみしめながら。